祭事のマナー
 
−五月人形,鯉のぼりの飾り方は?
●武者人形はスペースに合わせて飾る工夫を
   五月五日は端午の節句です。この日は別名・菖蒲の節句とも言い,もともとは厄除け,魔除けの行事が行われる日でした。現在のように男の子の節句になったのは,「菖蒲」の音が「勝負」や「尚武」に通じることからだと言われています。
   端午の節句には武者人形や鯉のぼりを飾ります。一般的な武者人形は三段飾りのもの。上段の後ろに金屏風を
立てて中央によろいかぶと,左右に弓矢と太刀を飾ります。ニ段目の中央には太鼓,右に陣笠,左に軍扇を,さらに,その左右に座敷のぼりを立てます。三段目の両脇にはかがり火を立て,中央に菖蒲酒,左右に粽と柏餅を供えるのが正式です。
   五月人形もひな人形と同じく,正式に一揃いすべてを飾る必要はありません。太刀一振りやかぶとだけを床の間に飾ってもいいでしょう。最近よく見られる住宅なら,武者絵の前に太刀飾りだけというのも,すっきりとさまになるのではないでしょうか。
●鯉のぼりは家に男子がいるあかし
   また,鯉のぼりは五月の象徴とも言うべき存在。以前は士族の家などに男児が生まれると「ここに男子あり」との印にのぼりを立てたものです。この印が一般家庭では鯉のぼりになり,端午の節句にあげるようになったのはずいぶん時代を経てからのことだと言われています。
   鯉のぼりは竿の先に回転玉か駕籠玉,その下に矢車をつけます。そして上から順に,吹き流し,真鯉,緋鯉の順に取りつけます。正式には朝のうちにあげて,日暮れに下ろすのがしきたりです。
   関東以西では,現在でものぼりを立てる地方が残っていますが,関東から東北にかけては鯉のぼりをあげる家が多くみられます。男の子の数だけの鯉のぼりが風にたなびく姿は壮観。とはいえ,都会地では威勢良く空を泳ぐ鯉のぼりを上げる空間が少なくなってきているのが現状です。

−端午の節句の祝い方は?
●粽と柏餅を中心に季節の三皿を添えて
   男の子のいる家では,端午の節句に親しい人たちを招いてお祝いをします。もてなす方法はひな祭りとほぼ同じように考えればいいでしょう。
   この日の祝い膳には粽と柏餅がつきもの。粽はもち米とうるち粉,葛粉などを水で練り,茅の葉で包んで蒸してつくります。これは,中国の伝説にちなんだもので,屈原という人が五月五日に自らの命を断ったことを弔うために供えたのが始まりだという言い伝えがあります。柏餅は,神様に供える餅を柏の葉で包んだことに由来するという話がありま す。
   初節句でもない限り,あまり盛大に人を招く必要はありませんが,お祝いに訪れた人をもてなす場合には,この粽や柏餅のほかに,季節に合わせて鰹のたたきなどの料理を用意すればいいでしょう。また,赤飯や鯛のかぶと煮などの縁起ものや,西日本地方なら出世魚と呼ばれるスズキやブリなどを並べても喜ばれます。
   お祝いに招かれた場合は,菖蒲の花やケーキなどを手みやげに。子供にミニカーやプラモデル,ちょっと目先を変えてコマや竹とんぼなどの伝統的な玩具を贈ってもいいのではないでしょうか。

菖蒲の節句には菖蒲湯でリラックス
   端午の節句の別名は,菖蒲の節句。魔除け,厄除けの日でもあるこの菖蒲の節句には,地方によっては軒先に菖蒲をさす習慣がいまでも残っています。このほか,めずらしい風習としては枕の下に菖蒲を敷いて寝るところもあったとか。現在では,風呂に入れて菖蒲湯にする風習がもっとも身近なようです。
   中国では,五月に災厄を払う薬草として菖蒲を使っていました。漢方では,菖蒲は健胃薬や打ち身の治療薬として用いられるもの。節句の当日には菖蒲酒(菖蒲の葉や根を浸した酒)を飲む風習もあったそうです。このならわしが日本に伝わり,厄除けとして軒先にさしたり,菖蒲湯に入ったりする行事として定着したと言われています。
   さまざまな入浴剤などが出まわっている昨今ですが,せっかくなら菖蒲の節句にちなんで,この日ばかりは家でも菖蒲湯を試してみてはいかがでしょう。現在なら,スーパーや花屋などで茎と葉を束ねたものが菖蒲湯用に売られています。これを湯舟に浮かべればいいだけなので,家庭でも簡単に用意することができるはずです。
   菖蒲には茎と葉に芳香があり,この湯に入ると身体を温める作用があるとか。季節の香りをたのしむとともに,身体にも良い菖蒲湯ですので,市販されているものとはひと味違う天然のリラグゼーションを楽しむことができそうです。

 
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