葬儀の後始末

−生前いただいた見舞品のお礼は?
●香典返しの際にお見舞いのお礼もあわせて行う
   闘病中にお見舞いをいただいて,そのまま病院で亡くなった場合,亡くなったのだからお見舞いは返さなくてもよいという考え方もありますが,たびたび見舞っていただいたり世話になった方には,感謝の気持ちを表したいものです。
   一般的に香典返しのときに,お見舞いのお礼を合わせて行うケースが多く,そのやり方もいろいろあります。
   ひとつは,お返しの分にお見舞いのお礼分を上乗せして品物を選んで贈る方法です。この場合は,香典返しの礼状のほかに,お見舞いに対する感謝の気持ちを手書きで添えます。
   また,お見舞い返しと香典返しの二つの品物を用意して贈る方法もあります。この場合,どちらにも不祝儀ののし紙を掛けますが,二重ねにせず,別々に配送すること。"重なる"ことを避ける意味です。
   そのほかに表書きを「お礼」として手書きのあいさつ状を添える方法もあります。これは,お見舞いだけをいただいた方にお返しをするときにも当てはまります。金額の目安ですが,お見舞いの三分の一から半額程度の品物を贈るようにします。

−職場に残った遺品はどうする?
●会社に出向いて整理する
   故人が現役だった場合は初七日が終わって,気持ちも一段落したら,早い時期に会社に出向き,個人所有の遺品を整理します。その場合,会社にまず連絡をして,いつごろ引き取りに行ったらいいのかをたずねます。
   自宅にロッカーのキーなど職場から借りているものがあった場合は,そのときに返せるようにひとまとめにしておきます。
   会社によっては,訪問するまでにあらかじめ故人の遺品をまとめてくれている場合もあります。また,遺族の気持ちを尊重して遺族の立ち合いのもとで整理することもあります。
   いずれの場合も職場の人に立ち合ってもらって,職場の遺品,自宅に持ち帰っていたものをそれぞれ点検して引き渡します。持ち帰る必要のないものがあれば,会社で処分してもらうとよいでしょう。
   職場で未払いの代金がないかどうかも,この際に確認して支払うようにします。
●仕事関係の書類は五年間は保管する
   ときとして会社の書類を自宅に持ち帰っている場合もありますから,五年間は保存しておきます。

−地方別の葬儀後
◆北海道地方
   初七日から四十九日の忌明けまで,七日ごとに身内で供養を行います。
◆東北地方
   岩手県では,葬儀の翌日に喪主お礼のあいさつで寺院へ行き,そこで今後の法要の打ち合わせを行います。
   秋田県では,精進落としの席に着かなかった人に,一週間を目安に香典返しを行うことが多いようです。
◆関東地方
   埼玉県では,故人が生前に着ていた着物を北向きに干し,四十九日の間,水をかける習慣がありますが,これは「仏が着物の水を飲みに来る」という言い伝えから行われています。
◆北陸地方
   葬儀の翌日に近隣の人たちへのあいさつ回りや寺院へのお礼に「お布施」と書いた金包みを持参しますが,新潟県南魚沼郡では,お布施のほかに「ひざつき」と呼ばれる金包みも用意することがあります。
◆甲信・東海地方
   長野県では,お寺参りと言って,遺骨を寺へ持って行き,お経をあげてもらいます。その足で善光寺に行き,厨子の扉を開けて本尊を見せてもらい,読経をしてもらう「骨開帳」を行います。
   三重県・松阪市では,菩提寺にお礼に出向くことを「届け参り」といいます。また奈良県では,葬儀の翌日に墓地へお参りすることがありますが,これを「灰寄せ参り」と呼んでいます。
◆近畿地方
   和歌山県には,葬儀を手伝ってくれた近隣の人に葬儀の翌日に少量の砂糖を贈る地域があります。
◆中国地方
   岡山県の各地には,忌中の間は,線香を一本と水を供え,忌明けを迎えると線香二本とお茶にかえる習慣が残っています。
   鳥取県・倉吉市には,葬儀の翌日に香典を整理する「香典びらき」という習慣が見られます。
◆四国地方
   四国の各地には,葬儀の翌日に家族や親戚が墓をきれいに整え,供養する「墓なおし」の習慣があります。
   愛媛県・松山市では,遠来の親族の都合などを考慮して,葬儀の翌日の墓なおしの日に初七日や七七日の法要を繰り上げて行い,同時に埋葬と精進落としも行うようになっています。
◆九州地方
   大分県では,七七日までに形見分けをすますのが一般的ですが,下毛郡の耶馬渓町では,初七日に行います。また宮崎県では,初七日あるいはニ七日の法要のあとで形見分けを行います。
◆沖縄地方
   「なーちゃみー」と言って,葬儀の翌日に墓参りをしますが,このとき,お茶や花,供え物や重箱を持参します。故人が極楽へ行けるようにみんなで手を合わせる習慣があります。