法   要
−遺骨は埋葬しなければならない?

●散骨することもできる
   現在のように,火葬した遺骨を墓前に埋葬するかたちは,ごく近年になって定着したものです。それまでは土葬が中心でした。また荼毘にした遺骨の一部を本山に納めるだけで,故人の墓をもたない,という例もみられました。
   このように埋葬のかたちは,時代や社会環境とともに変化するものです。
   平成三年の秋に「葬送のための祭祀で節度をもって行われる限り問題でない」という公式見解が法務省より出されたことで散骨が認められるようになり,海や山に遺骨をまいたりするようになりました。

移り住んだところに新しく墓を建てたら?
   先祖や家族の墓がある故郷を離れて,自分が移り住んだところに新しく墓を建てた場合,新仏の遺骨は,新しい墓に埋葬すればよいのです。これを「分家」と言います。
   しかし,離村などをして墓を移したいときは,古い墓の遺骨を新しい墓に納めねばなりません。このような場合は,引き上げるときも,新しい墓に納めるときも,僧侶を招いて法要を営みます。墓を移転するときは市区町村役場の許可がいります。

遠隔地の菩提寺までの遺骨の運び方は?
   菩提寺が遠く離れていると,遺骨を運ばなければなりませんが,その場合必ず手から離さないで抱えているようにします。列車などの場合は,網棚などに乗せないようにします。タクシーなどを利用するときは,料金のほかに心づけを渡すようにします。

墓にまつわる迷信
   先祖のお祀りは,報恩のためや功徳を回向して,それによって自分の心を養うためにすることで,「たたり」「仏罰」などがないようにするものではありません。
   またそのようなたたりや罰というものは,仏法にはなく,従って仏教的根拠はありません。
   墓にまつわることで,次のようなことがよく言われていますが,迷信と考えていいでしょう。
*何でもないときに墓を建てると縁起が悪い
*北向きの墓は,その家に不幸を招く
*墓の苔や汚れを落とすと不幸が起きる
*年忌の際にしか墓を建ててはならない
*墓のかたちによって不幸を招くことになる
*転居したとき,近所のお寺に墓地を求め,そこに先祖の墓を移すとたたりがある
   墓については,教典に何の指示や規定もありません。また最近になって,墓相学などというものが現れ,墓についてのきまりを強調する傾向が強いようですが,今のような墓が一般化したのは明治以降で,比較的新しい流れです。従って,そのきまり通りにつくらなければ不幸があるなどと気にする必要はありません。

−新盆の迎え方は?
●新盆とは忌明け後に初めて迎えるお盆
   忌明けが過ぎてから初めて迎えるお盆を「新盆」あるいは「初盆」と言います。忌明け前にお盆を迎えたときは,翌年を新盆とします。
   お盆は,盂蘭盆会と言って,毎年七月十五日のほか旧暦の七月十五日に行うところや月遅れの八月十五日のところなど,地方によって異なります。東京近辺では,お盆といえば七月十五日です。
   いずれにしても十三日の夕方には門口で迎え火を焚き,盆提灯をつけて精霊が迷わずに帰れるようにします。十四,十五日は精霊は家にとどまり,十六日(十五日の地方も)に送り火を焚いて送ります。
●通常の盆棚とは別に新仏の祭壇を用意する
   新盆は,いつものお盆よりもていねいに供養を営みます。いちばん緑が深かった人が白張提灯を買って飾りますが,この提灯は送り火で燃やします。
   盆棚には,決まったお供えのほかに故人の好きだったものを供えます。仏壇には霊供膳を供えますが,故人の好きだった料理を盛るようにします。
   また新仏のための祭壇を通常の盆棚とは別に用意することもあります。
●葬儀のときに世話になった人なども迎えて供養をする
   法要は近親者を招いて営みますが,葬儀のときにお世話になった人も招き,ていねいに供養します。
   僧侶にお経をあげていただいたあと,法要の膳を皆で囲みます。僧侶には,お礼として「御布施」と表書にした金包を渡します。
   お盆には,先祖の精霊が家に戻ってきています。つまり墓は留守ということですから墓参りはしません。僧侶がわざわざ各家を回って読経するのもそのためです。
   墓地が近い場合は,お盆の初日の昼間に霊を迎えにいき,掃除と参拝をすませばよいでしょう。
−新盆に招かれたら?
●新仏に近い近親者は提灯などを贈る
   新仏にもっとも近い親戚は,白張提灯を贈ります。それ以外の近親者や友人は普通の盆提灯ですが,最近は住宅事情から,たくさんの提灯を飾らなくなっています。
   そこで「御仏前」もしくは「お提灯代」と表書きした金包を贈り,その家庭に合ったように整えてもらうという方法もありますが,この場合,家族が準備する前に贈るようにします。地方によっては初盆供養を丁重に行うところもあり,お供えものに対する返礼ギフトもさかんに行れているようです。