−相続の優先順位は? |
●故人の配偶者や子どもが第一順位
相続には二つの相続があります。ひとつは,民法で決められていることに従って行われる相続もうひとつは故人の遺言によって行われる相続です。
遺言がない場合は,民法の規定に従って行われます。故人の配偶者と子どもが第一順位で,最優先の相続人というわけです。また胎児にも相続権があります。
配偶者や子どもがないときは,父母,祖父母が第二順位,兄弟姉妹が第三順位となります。
子どもは,男女や年齢,既婚・未婚を問わず同等の権利をもち,養子でも実子でも,結婚した娘や他家と縁組みした養子も相続を受けることができます。
また現在,検討課題となっていますが,非嫡出子も嫡出子の二分の一の相続ができます。
●配偶者は財産の二分の一を相続できる
子どもがいる場合は,配偶者が二分の一を,子どもが残りの分をその人数分に従って均等割で受けます。子どもがなければ,配偶者が三分の二を相続,残りを故人の親が相続します。配偶者が死亡しているときは,子どもが均等割で相続します。また子どもが死亡しているときは,その人の子どもつまり故人の孫が「代襲相続」というかたちで,ほかの子どもと同等の相続を受けることができます。
●相続人がいない場合は原則的に国のものとなる
故人に配偶者をはじめ,子どもや兄弟姉妹など相続の権利をもつ人がいない場合は,故人の財産は,原則的に国のものとなります。
●相続税の申告と納税は開始から六か月以内
財産目録をつくり,誰がどのように相続するのかを早く決定します。このときに不動産の抵当権や借地権などの貸借関係も明確にします。
遺産の分割が決定したら,遺産分割協議書という文書を作成し,トラブルを防ぐようにし,相続の開始から六か月以内に相続税の申告と納付を行うようにします。
●期限内に分割できないときは法定相続分で申告納付
相続税の申告・納付の期限内に遺産の分割が決まらない場合は,とりあえず法定相続分で相続したものとして期限内に申告・納付します。後日正式に決定した時点で申告のし直しを行います。税額が増える人は,修正申告を,減る人は更正の請求を行います。
●財産相続は放棄できる
故人に負債があった場合は,遺産を相続すると同時に負債も相続することになります。財産の相続を放棄すると負債を負担する必要がなくなります。相続を放棄する場合は,相続を知った日から三か月以内に家庭裁判所で手続きを行います。このような場合は,よく考えて対処するようにしましょう。 |
−香典や葬儀費用に税金はかかる? |
●原則的に香典には税金はかからない
一般的に,香典は所得とは見なされません。ただし,一人の人から何十万円,何百万円などという常識を離れた額を贈られたときは一時所得と見なされる場合もあり,課税の対象となることもあります。ちなみに,一時所得が五十万円までは非課税,五十万円を超えるとその超えた分の二分の一が課税対象になるといわれます。
●葬儀の費用は相続税の控除の対象になる
葬儀にかかった費用のすべては,相続税を計算するときに債務控除の対象と認められています。葬儀社や寺などへの支払いだけでなく,さまざまな経費について,すべての領収書を保管しておくことが大切です
●勤務先からの弔慰金などは相続税の対象になる
故人の勤務先からいただいた弔慰金や花輪代,葬祭補助金などは,一定の額を超えると退職金と見なされ,相続税の対象となることがあります。ちなみに弔慰金の非課税枠は,@業務上の死亡のときは三年分の給料(死亡時の額で計算,賞与を除く)に該当する額まで。A業務上の死亡でない場合は六か月の給料(死亡時の額で計算,
賞与を除く)に該当する額まで。 |
−遺言がある場合,トラブルを防ぐには? |
●遺言の開封は遺族や他の相続人が立ち会いで
遺言に封がしてある場合は,勝手に開封してはいけません。必ず家庭裁判所に提出し,検認を受け,遺族や他の相続人が立ち会いのもとで開封されます。これは,遺言に加筆や削除などを防ぐために複数の人のもとで行います。
検認を申し立てるのは,遺言の保管者,あるいは遺言を発見した相続人が,相続開始地の家庭裁判所に申し立てます。
●遺言が何通もある場合は日付けの新しいものが有効
遺言が二通以上出てきた場合は,新しい日付けのものが法的に有効になります。
しかし同じ日付けでも,内容が異なったもので複雑な遺言書が出てきた場合は,どちらの遺言も法的に無効になってしまいます。遺言は毎年書き改められることが望ましいといえます。 |
−有効な遺言,無効な遺言は? |
●口頭での伝言,テープレコーダーは無効
遺言には次の四つの種類があります。
@自筆証書遺言書 本人の自筆で,署名,捺印,日付けが必要です。代筆やタイプは無効です。訂正文字があれば「○字訂正」と自筆で付記し署名捺印が必要です。
A公正証書遺言 公証人に遺言の内容を話し,公証人が遺言証書を作成し,捺印します。作成は公証人役場で,本人が病床のときは,公証人は病院や自宅へ出向きます。遺言の原本は,公証人役場に三十年間保管されます。
B秘密遺言 口述筆記でもよく,日付けはなくてもいいですが,署名・捺印が必要です。遺言書を封筒に入れ,遺言書に捺印した印で封印し,公証人に提出します。公証人は,証人二人以上が立ち会いのもとに封筒の上に日付けと本人の遺言であることを明記し,捺印します。公証人の署名・捺印がないものは無効です。
C死亡危急遺言書 臨終のときなど非常の場合のものです。三人以上が証人として立ち会い,口述筆記します。日付けを入れて遺言者,証人全員が捺印します。日付けから二十日以内に家庭裁判所の検認を受けます。検認がないものや裁判所への提出前に開封したものは無効になります。
このように遺言の種類によって必要な事項が変わります。それらをきちんと押さえておかなければ遺言は無効になりますから注意しましょう。 |
−遺言に書いてあることはすべて有効? |
●認められるのは相続,財産,身分に関すること
たとえ法的に有効な遺言書でも,書いてあることすべてが認められるわけではありません。
法的に認められるものは,
@相続の割合の指定
A特定の人に財産を贈ることの指定
B相続権の廃除や取り消しを行う
C子どもを認知する
D後見人を指定する
などの相続,財産,身分に関する事項だけです。また,本人が十五歳以上の人であれば,その遺言は有効となります。 |
−動産,不動産などの名義変更の手続きは? |
●市区町村役場の窓口に相談する
名義変更といっても,それは土地家屋,株券,預貯金から電話,電気,ガス,水道,自動車,借地・貸家など故人名義になっていたものはすべてに及んできます。
名義の変更手続きに必要なものは,故人の除籍抄本,各種保険の受取人の戸籍抄本,印鑑登録証明書などですが,届け出先によって手続きの仕方も違います。葬儀の後始末が一段落したら,市区町村の役場の民生課などに相談するようにします。効率よく手続きできるように教えてもらうとよいでしょう。
いろいろある相続の形式
故人が相続として残すものは,財産や債権などの「積極財産」だけでなく,借金などの債務もあります。
相続人は,故人の残したすべての債権や財産,また債務を負うだけでなく,相続を放棄したり,限られた範囲だけを相続する「限定承認」というかたちもあります。
「限定承認」というのは,故人の残した債務を負うけれどもその範囲は,相続する財産や債権などの積極財産の限度内に限るというものです。つまり,相続した積極財産を超えた債務については,相続人の責任の範囲外ということになります。
そのほかに,相続を放棄するかたちもありますが,これは,種極財産を引き継ぐ権利を放棄するかわりに債務にも責任を負う必要がないというものです。
どのようなかたちで相続を行うかは,相続人が,相続の開始時期を知ったときから三か月以内に,家庭裁判所に手続きをとらなければなりません。
この三か月の期間を過ぎると,相続人は,自動的にすべての債権や財産,債務を相続することになります
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