結婚のマナー

婚約

−婚約を解消するには?
●結論を出す前にもう一度話し合いと自問自答を
   結婚への準備を進める婚約期間中に,いままで自分の知らなかった相手の考え方などに触れて,共同生活への自信をなくしたり,人生をともに生きるパートナーとして不適当だと気づくこともあるでしょう。もともと,夫婦とは言っても他人同士。すべてにおいて同じだと思うほうが間違いです。単にリズムが違うとか好みが合わないというのなら,生活をともにしていくなかで歩調を合わせていくことは可能。お互いの個性を認め合い,時間をかけて調和していくことが大切です。
   問題はお互いの価値観や人生観が違って相入れない場合。とくに,理想とする家庭像や結婚観,男女観について,つき合いが深まるにつれ差が開いていく場合には,再考が必要かもしれません。ただし,結論を出す前にもう一度話し合う必要があるでしょう。いくら相手を愛していても人生のパートナーとして支障がないか,相手の人格や生活,家族関係を見つめ直すことが第一。率直な話し合いと自問自答のうえで結論を出しましょう。また,相手の心変わりや,ほかに好きな人ができた場合,忘れ難い人がいる場合は,結婚生活の基本に関わる問題です。納得がいくまで十分話し合い,結論を出すように努めます。
●費用は双方が負担するのが原則
   迷いが生じたらうやむやにせず,不安材料を確めて相手との話し合いを重ねながら考えます。そのためには,挙式を延期する必要もあるでしょう。迷いや疑問点は相手に率直に話してみることが先決。言いにくいこともはっきり伝えないと解決することはできません。修正や合意ができれば問題ありませんが,話し合いの結果,歩み寄る余地のない場合には早めに結論を出しましょう。二人の問題ですから結論も二人で納得したうえで出すのが理想。冷静に話せない状態になったら仲人など第三者に頼むのもやむを得ないでしょう。
   双方が納得したら,婚約前の状態や関係に一刻も早く戻すことが第一。結納や婚約記念品など贈り合った金品などは相手に返しますが,指輪やネックレス,時計などすでに身につけたものは現金で返すか,現物を返して贈り主に処理を任せます。この際,お互いに多少の損失が生じることはやむを得ません。責任を押しつけ合ってわずかな額を補填してもらうより,婚約前に話し合ったり考えていれば避けられたことでしょうから,いい勉強代と割り切りましょう。
   挙式や新婚旅行,新生活のための用品購入費用も,すでに出費したものは双方で折半して負担するのが原則です。しかし,家具などの購入代金は現物が残るので出費には入れず,話し合って処分する方法を決めましょう。

−婚約解消で慰謝料を請求できるケースは?
●慰謝料や損害賠償は第三者に一任するのがいちばん
   理由も明らかにしないまま一方的に解消を申し出たり,不誠実な行為があったり,結婚生活に支障をきたすトラブルを起こした結果,婚約解消に至った場合,原因をつくった側が損失(出費)のすべてを負担するのが常識です。さらに,婚約を機に会社を退職してしまった場合や社会的信用が失墜したり,深く傷ついた場合においては,それに伴う慰謝料や損害賠償を請求することができます。
   損害賠償や慰謝料については,その方法と金額などの処理は第三者に一任したほうが良いでしょう。
   たとえば,弁護士などの専門家に相談するのも一つの方法ですし,家庭裁判所に調停を頼んで法にゆだねることもできます。
   一般的には,結納金の倍返しなどというしきたりもありますが,納得できないまましきたりどおりにするよりも,実質的な損失に対する損害賠償や慰謝料として処理したほうが合理的と言えるでしょう。
   ですが,何よりも大切なのは,本人が元の状態に早く戻ること。調停に長い時間をかけていつまでも婚約解消問題の中にいるよりも,なるべく早く新たな気持ちで幸せな人生を手にすることがいちばんです。

婚約解消の通知例
   二人が納得して婚約解消に至った場合には,婚約通知状と同じく,本人たちが連名で婚約解消の通知を出すのが道理かもしれません。しかし,いくら合意のうえの結果としても,めでたいことではないので,連名で出すのはおかしなもの。それに,何も不幸な出来事を大っぴらに知らせなくてもいいでしょう。とはいえ,婚約式や婚約パーティの列席者,婚約通知状を送った人たちには知らせるのがマナー。詳しい事情まで書き添える必要はありませんが,報告とお詫びを兼ねた内容にします。
◆通知状の文例
   拝啓 いよいよ秋涼の季節となりましたが,皆様方には
ご壮健のこととお慶び申し上げます。
   さて,初夏のころ婚約成立の通知を差し上げ,皆様方か
らはお祝の言葉をいただきましたが,このたび,幾度と
なく二人で話し合った結果,婚約を解消することといた
しました。お互いに心痛むことではありますが,今はより
幸せな新しい人生のスタートと信じております。どのよ
うな理由があったにせよ,何よりも,皆様のご厚意にお応
えすることができなかったことを,ただただ不徳の限り
と恥じ入るばかりです。
   これからは,心機一転新しい人生を切り開くべく誠心
誠意努力いたす所存です。今後とも相変わらずのご指導
ご鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。
   以上,ご報告,お詫びのうえ,皆様方のご繁栄をお祈り
申し上げます。                              敬具
 


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